ドクター渡辺の税金講座

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平成30年度税制改正
特定の居住用の財産を買換え等に伴う譲渡損益に係る課税の特例の延長と改正

Q1.特定の居住用の財産を買換え等の場合の長期譲渡所得の課税の特例制度が部分的に改正のうえ適用期限が延長されたそうですが、どんな内容ですか。

A1.

一.改正前の制度のあらまし

1.個人が平成5年4月30日から平成29年12月31日までの間に、その年1月1日において所有期間が10年を超える居住用財産で、その者が10年以上居住の用に供していたものを譲渡し、その年の前年の1月1日からその譲渡の年の12月31日までの間に買換資産を取得し(注)、かつその取得の日から譲渡の年の翌年12月31日までにその買換資産を自己の居住の用に供したとき、又は供する見込みであるときは、譲渡資産及び買換資産について後記2及び3の要件のもとに、その譲渡資産の分離長期譲渡所得の金額及び所得税等の税額を次の(表1)のとおり計算できます。

(注) 買換資産の取得は、上記を原則としつつ、譲渡の年の翌年12月31日を取得期限とする特例が認められています。(後記3ご参照)

(表1)譲渡所得及び税額の計算式

表1

譲渡資産の要件

  • 1)居住用財産であること
  • 2)所有期間:その者の所有期間が10年超であること
  • 3)居住期間:その者の通算居住用期間が10年以上であること
  • 4)譲渡価額:1億円以下であること
  • 5)譲渡先の制限:次の者への譲渡でないこと
    • ①配偶者及び直系血族
    • ②上記以外の親族で生計を一にする者又は譲渡後に同居する者など
  • 6)譲渡期限:
    • ①上記1)~5)の要件を満たす居住用家屋で、その者の居住の用に供されなくなった日から3年を経過する年の年末までの家屋及び敷地の譲渡であること
    • ②上記の家屋を取り壊した場合は、その敷地について、その家屋を取り壊した日の属する年の年末までの譲渡でかつ①の期限までの譲渡であること

2.買換資産の要件

  • 1)居住用財産であること
  • 2)面積等要件
    • 建 物:床面積50㎡以上であること
    • 土地等:面積500㎡以下であること
  • 3)経過年数等の要件
    • 耐火建築物(マンション等:築後25年以内又は耐震基準適合住宅であること
    • 非耐火建築物(木造住宅):改正前は要件なし
  • 4)取得期限及び居住要件
    • ①譲渡年の前年1月1日から譲渡年の12月31日までに取得し、かつ取得年から譲渡年の翌年12月31日までに居住の用に供し、又は居住する見込みであること(=原則)
    • ②譲渡年の翌年12月31日(以下「取得期限」といいます)までに買換資産を取得する見込みであり、かつその取得年の翌年12月31日までに居住の用に供する見込みであるときは、一定の届出書を税務署長に提出し承認を受けて特例の適用を受けることができます。(=特例)

二.改正内容

  • 1)買換え資産要件の内経過年数要件についての改正
    • ①非耐火建築物(木造等)については、改正前には特に要件は定められていませんでしたが、改正により現行の耐火建築物の経過年数要件と同じ要件が課されることになりました。
    • ②なお、経過年数要件を満たさない非耐火住宅を取得した場合であっても、その「取得期限」までに、その家屋を建て替えたり、耐震改修をして経過年数要件に適合させることも認められます。
  • 2)本特例の適用期限の延長
    本特例の適用期限(平成29年12月31日)が、平成31年12月31日までに2年延長されました。

三.(参考) 本特例の他の居住用財産の譲渡特例との適用関係について

(表2)居住用財産の譲渡所得に関する特例の適用関係一覧表

表2

(注)軽減税率の特例(=10年超の居住用財産の長期譲渡所得課税の特例)
居住用財産の譲渡所得の特別控除(3,000万円)後の課税所得に次の税率を適用
  • イ)6,000万円までの部分の税率 14%(所得税10% 住民税4%)
  • ロ)6,000万円超の部分の税率  20%( 〃 15%  〃 5%)

Q2.「居住用財産の買換えの場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除制度」、及び「特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除制度」についても適用期限が延長されたそうですが、どんな制度ですか。

A2.

一.制度延長の背景と延長期限

居住用財産の含み損を抱えている者がなお多く、売却時に築年数5年以上の住宅の譲渡のうち、約7割において売却損が発生しており、住み替えの支障となっている中で、住宅・不動産の流動化を図るとともに、ライフステージに応じた住み替えを引き続き支援する観点から、掲題の特例の適用期限が平成29年12月31日のところ平成31年12月31日まで2年延長されております。

二.居住用財産の買換えの場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除制度のあらまし

個人が平成16年1月1日から平成31年12月31日(改正後の期限)までの間にその年の1月1日現在において所有期間が5年を超えるなどの一定の要件(後記<図表1>参照)を満たす居住用財産の譲渡(以下「特定譲渡」といいます)をした場合において、その特定譲渡の日の属する年の翌年12月31日(以下「取得期限」といいます)までの間に一定の要件(後記<図表1>参照)を満たす居住用財産(以下「買換資産」といいます)を取得して、その取得した日の属する年の12月31日においてその買換資産に係る住宅ローンの金額を有し、かつその取得した日の属する年の翌年12月31日までの間にその者の居住の用に供したとき、又は供する見込みであるあるときは、
  • ①その居住用財産の譲渡損失の金額について、一定の要件の下に他の所得との損益通算が認められ
  • ②通算後譲渡損失の金額を有し、かつその年の12月31日において買換資産に係る住宅ローン残高を有する場合には、一定の方法により損失の繰越控除が認められます。

三.特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除制度のあらまし

個人が平成16年1月1日から平成31年12月31日(改正後の期限)までの間に、その年の1月1日において所有期間が5年を超えるなどの一定の要件(後記<図表1>参照)を満たす居住用財産の譲渡(以下「特定譲渡」といいます)をした場合においては、
  • ①その居住用財産の譲渡損失の金額について、一定の要件の下で他の所得との損益通算が認められ、
  • ②通算後譲渡損失の金額を有する場合には、一定の方法により損失の繰越控除が認められます。

<図表1> 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の特例と特定居住用財産の譲渡損失の特例の適用要件比較表

表3