ドクター渡辺の税金講座

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平成30年分度税制改正
小規模宅地等についての相続税の課税価格軽減特例の見直し(その2)

Q1.今年度税制改正において小規模宅地等のうち、「貸付事業用宅地等」についても、相続税の課税価格の軽減特例が見直されたそうですが、どんな改正ですか。

A1.平成30年度税制改正法案が3月28日に可決・成立しました。その中で、今年度に改正された小規模宅地等についての相続税の課税価格の軽減特例のうち、「貸付事業用宅地等」についての改正内容は次のとおりです。

1.改正前の制度の概要

1)個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、その相続開始の直前において、被相続人もしくはその被相続人と生計を一にしていたその被相続人の親族(以下「被相続人等」といいます)の賃貸事業の用に供されていた宅地等(土地又は土地の上に存する借地権等をいいます)で、次の(表1)に掲げる要件のいずれかを満たすものがある場合には上限面積200㎡までの小規模宅地等については、相続税評価額が50%軽減されます。

(表1) 貸付事業用宅地等の適用要件

表1

2)被相続人等の貸付事業の範囲

被相続人等の不動産貸付業、駐車場業又は自転車駐輪場業などをいい、事業と称するに至らない不動産の貸付けで相当の対価を得て継続的に行うもの(以下「準事業」といいます)を含みます。

2.「貸付事業用宅地等」の特例の改正概要

1)改正事項と改正趣旨

  • ①上記(表1)の貸付事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等が原則として除外されます。(詳細は後記「改正内容」のとおりです)
  • ②改正の趣旨としては、次のような租税回避的な行為に対する歯止め措置とされています。
    • イ)相続開始を予測して現・預金を貸付不動産に変換し、相続税負担の「駆け込み軽減」を図る行為
      (注)要介護認定等の判定の時期
      被相続人が要介護認定等を受けていたかどうかは、施設等への入所の時ではなく、相続開始の直前において判定します。
    • ロ)売買しやすい貸付用不動産を相続開始前に取得し、一時的に現・預金を不動産に換えて相続税負担を軽減した上で、相続税の申告期限後に売り抜ける行為

3.改正内容

1)原則

貸付事業用宅地等の範囲から相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等を除外する。

2)例外

ただし、相続開始前3年を超えて「事業的規模」で貸付事業を行っている者が、当該貸付事業の用に供しているものは上記①の対象から除く

3)経過措置

平成30年4月1日前から貸付事業の用に供されている宅地等に上記①、②は適用しない。

4.改正内容についての補足説明

1)原則的な改正内容について

  • ①相続対策のために、にわかに貸付事業用宅地等を取得しても、そこから相続開始が3年を超えて先にならないと、従前から事業的規模で貸付事業を行っていない限り、当該宅地等に200㎡までを上限に50%減額特例の特例適用はありません。
  • ②ただ、現・預金を賃貸不動産に転換することにより、原則的な相続税評価額が下記(表2)のとおり軽減となる効果は従前どおりです。
      つまり賃貸不動産の下記(表2)の原則的な評価額の改正は行われておらず、それが改正後においても「貸付事業用宅地等」に該当すれば更に200㎡までを限度に相続税評価額が50%減額されるということです。

    (表2) 現・預金を賃貸不動産に転換した場合の原則的な相続税評価額計算例

    <前提条件>
    • 1)現・預金1億円で賃貸不動産1億円(土地4千万円、建物6千万円)を取得したとする。
    • 2)土地の路線価評価額は土地の時価の80%とする。
      また取得土地の借地権割合は60%、借家権割合は30%とする。
    • 3)建物の固定資産税評価額は取得価額の50%程度とする。 表2

    <相続税評価額軽減効果>

    • 1)本件前提条件の下では、現・預金1億円が賃貸不動産に転換することで、相続税評価額が4,724万円へと半分以下に下がります。
    • 2)現状の低金利下では、現・預金より賃貸不動産の利回りの方が高くなると思われ、物件の立地条件等次第では、大きな対策効果があり得ます。

2)例外的な取扱いについて

  • ①相続開始前3年を超えて「事業的規模」で貸付事業を行っている場合には、今回の税制改正の適用対象から除かれます。
    この場合の「事業的規模」の基準は、所得税の不動産所得に係る事業的規模についての判定基準である「5棟10室基準」が適用される見込です。
    (注)5棟10室基準とは(所得税基本通達26-9)によりますと次のとおりです。
    • 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること
    • 貸間・アパート等の貸与については、独立した室数がおおむね10以上であること
  • ②オーナーチェンジによる「事業的規模」の引継ぎの可否
    第三者が従前から所有していた「事業的規模」の賃貸不動産を中古でそのまま取得(オーナーチェンジ)した場合の「相続開始前3年を超えて事業供用」の判定については、前オーナの事業的規模で貸付けを行ってきた期間は考慮されません。
  • ③経過措置の取り扱いについて
    経過措置については、「事業的規模」の要件は付されていません。 従って、マンション1室のみの貸付けであっても、平成30年4月1日前に取得して貸付けているのであれば、3年以内に相続が開始しても「貸付事業用宅地等」の適用対象となります。