ドクター渡辺の税金講座

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令和2年度 税制改正
低未利用土地、所在不明土地、空家敷地に対する税制改正を巡って

Q1.今年度税制改正で低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除制度が創設されたそうですがどんな制度ですか。

A1.低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除制度創設の背景、及び制度のあらましは次のとおりです。

1.制度創設の経緯とあらまし

  • 1)近年地方部を中心に全国的に空き地が増加していますが、その背景には次のような課題の存在が指摘されています。
    • ①想定以上に売却収入が低い
    • ②売却に際して生じる譲渡費用(測量費、解体費等)の負担が相対的に重い。
    • ③譲渡費用の支出のほかに、さらに譲渡所得税の負担が重なるため土地を売らずに空き地として放置される結果となっている。
  • 2)そこで、少額の低未利用土地について、売主の売却にあたっての負担感を軽減することで、現所有者が土地を売却するインセンティブを付与し、その土地に新たな価値を見出す者への譲渡を税制上促進しようとするものです。
  • 3)この制度の適用にあたっては、当該土地が低未利用であること、及び買主が利用意向を有することについて市区町村が確認したものに限定しているの特色です。

2.制度の概要

  • 1)個人が都市計画区域内にある長期所有の低未利用土地等の譲渡をした場合には、一定の要件のもとにその年中の低未利用土地等の譲渡に係る長期譲渡所得の金額から100万円を限度に控除する。
  • 2)適用を受けようとする低未利用土地等と一筆の土地から分筆された土地、又はその土地の上に存する権利について、その年の前年、又は前々年において上記1)の適用を受けている場合には、上記の1)の適用はできません。
  • 3)適用時期
    令和2年7月1日から令和4年12月31日までの譲渡に適用されます。

3.新制度の項目(用語)の意義について

創設された制度の項目ないしは用語の意義については下表のとおりです。

3.新制度の項目(用語)の意義について

Q2.今年度の税制改正で所有者不明土地等への固定資産税の課税対策が講じられたそうですがどんな改正ですか。

A2.所有者不明土地等への固定資産税の課税上の課題と、その対応措置のあらましは次のとおりです。

1.所有者不明土地等に係る固定資産税の課税上の課題

近年所有者不明土地が全国的に増加しており、そのため固定資産(土地・建物)に対する固定資産税の課税においても所有者が確定せず、課税の公平性が損なわれております。 所有者が不存在ないしは特定ができないため固定資産税が課税できないケースとしては次のようなものがあるようです。

    • ①相続人による相続登記がされておらず、市町村にも現所有者の申告がされていない(申告義務なし)ため、所有者の特定ができない場合(以下「ケース1」といいます)
    • ②死亡した登記名義人から賃借していた者が居住を継続しているが、登記名義人の相続人は全員相続放棄している場合(ケース2)
    • ③外国籍の所有者Xが死亡し、その弟が管理費を支払ってそのマンションに居住しているが、国内に戸籍等が存在しないため、相続関係が確認できない場合(ケース3)

2.所有者不明土地等への固定資産税課税の対応(措置)

所有者不明土地等に係る固定資産税の課税に対応するため、次の措置が講じられます。

  • 1)現に所有している者の申告の制度化
    • ①市町村長は、その市町村内の土地又は家屋について、登記簿等に所有者として登記等がされている個人が死亡している場合、当該土地又は家屋を現に所有している者(以下「現所有者」といいます)に、当該市町村の条例で定めるところにより、当該所有者の氏名、住所、その他固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させることができることになります。
    • ②適用期限
      上記の改正は、令和2年4月1日以後の条例の施行の日以後に現所有者であることを知った者について適用されます。
      (注)
      • イ)固定資産税における他の申告制度と同様の罰則も設けられます。
      • ロ)上記「ケース1」に対応する措置に該当します。
  • 2)使用者を所有者とみなす制度の拡大
    • ①市町村は一定の調査を尽くしてもなお固定資産の所有者が一人も明らかにならない場合には、その使用者を所有者とみなして固定資産税課税台帳に登録し、その者に固定資産税を課税することができることになります。
      (注)
      • イ)上記「一定の調査」とは住民基本台帳及び戸籍簿等の調査、並びに使用者と思われる者その他の関係者への質問など、所有者特定のために必要な調査をいいます。
      • ロ)上記「ケース2」や「ケース3」に対応する措置に該当します。
      • ハ) 使用者を所有者とみなして固定資産税課税台帳に登録しようとする場合には、その旨を当該使用者に通知します。
    • ②適用時期
      上記の改正は令和3年度以後の年度分の固定資産税について適用されます。

Q3.空家の敷地に係る固定資産税等については、住宅用地の特例対象から除外されている そうですがどんな措置ですか。

A3.特定空家等の敷地に係る固定資産税等については、住宅用地の課税の軽減特例対象から除外する措置が平成27年度税制改正により講じられています。
以下で住宅用地の特例制度と特定空家等の敷地に該当した場合の特例対象から除外措置のあらましを再確認させていただきます。

1.住宅用地の課税の軽減特例制度

  • 1)住宅用地に利用されている土地に係る固定資産税や都市計画税の課税評準が下表の通り軽減されています。

    1.住宅用地の課税の軽減特例制度

    (注)集合住宅の敷地については、「その住宅の戸数×200㎡」までの敷地について、住宅用地の軽減措置の適用が受けられます。


  • 2)固定資産税等の税額は土地も家屋も次の算式で計算されます。

    1.住宅用地の課税の軽減特例制度

2.特定空家等の敷地に係る固定資産税等の特例対象からの除外

  • 1)全国の空家が約820万戸(空家率13.5%)に達しており、長期間放置され管理が不十分になった空家は様々な問題の温床になっています。(H25年総務省 住宅・土地統計調査より)
  • 2)空家が放置されている理由の一つに、建物さえあれば固定資産税等の住宅用地の特例措置が適用され続けるためとの指摘があります。
  • 3)そこで、平成27年度税制改正により「特定空家等」に係る土地について、住宅用地に係る固定資産税及び都市計画税の課税評準の特例対象から除外されています。

3.「特定空家等」の意義と特例除外措置について

  • 1)平成26年11月に空家等対策推進法が成立(平成27年2月より施行)行政指導の対象として、次のいずれかの状態にある空家とその敷地を「特定空家等(管理が不十分な空家)」と定めています。
    • ①倒壊等著しく保安上危険となる恐れがある状態
    • ②著しく衛生上有害となる恐れがある状態
    • ③適切な管理が行われないため著しく景観を損なっている状態
    • ④その他周辺の生活環境の保全上放置することが不適切な状態
  • 2)特定空家等に対しては、市町村長から除却、修繕、立木竹の伐採等の措置の指導・助言、勧告、命令を出すことができます。
    また、行政代執行の方法により強制執行が可能になります。
  • 3)さらには、上記の勧告を受けた特定空家等の敷地を住宅用地の特例措置の対象から、市町村長の権限で除外することになります。