ドクター渡辺の税金講座

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平成30年分度税制改正
小規模宅地等についての相続税の課税価格軽減特例の見直し(その1)

Q1.小規模宅地等のうち、特定居住用宅地等についての相続税の課税価格の軽減特例が見直されるそうですが、どんな改正ですか。

A1.今年度に改正される「特定居住用宅地等」とは

1.改正前の制度の概要

1)個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、被相続人等が居住の用に供していた宅地等で、上限面積330uまでの小規模宅地等のうち、下表の適用要件を充足するものについては、相続税評価額が80%軽減されます。

(表1)特定居住用宅地等の適用要件(改正前)

表1

2)被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の範囲

  • ①被相続人等の居住していた家屋を被相続人の親族が所有していた場合
    その敷地に対する地代及び家屋に対する家賃が互いに無償による賃借である場合に限り特例対象になります。
  • ②被相続人が老人ホーム等に入所していた場合
    相続開始直前において、相続人の居住の用に供されていなかった場合でも、次の要件を満たしているときは、居住の用に供されなくなる直前において当該被相続人の居住の 用に供されていた宅地等は特例対象となります。
    • イ)要介護認定、要支援認定又は障害支援認定を受けていた被相続人が施設等に入所していたこと(注)
      (注)要介護認定等の判定の時期
      被相続人が要介護認定等を受けていたかどうかは、施設等への入所の時ではなく、相続開始の直前において判定します。
    • ロ)その家屋を事業の用(貸付を含みます)又は被相続人と生計を一にする親族以外の者の居住の用に供されていないこと
  • ③二世帯住宅の場合の取扱い
    被相続人の居住の用に供されていた家屋がいわゆる二世帯住宅である場合には、区分所有建物でない限り、被相続人の親族(生計別の親族を含みます)の居住用部分に係る敷地についても特例の対象に含まれます
  • ④居住用建物の建替え中等に相続が開始した場合
    被相続人の居住の用に供されている建物(被相続人又はその親族の所有に係るものに限ります)の建替え等のための建築中に、又はその建物の完成後被相続人等が居住の用に供する前に相続が開始した場合には、その相続開始直前においてその被相続人等のその建物へ居住に向けた準備行為の状況等からみて、その建物を速やかに居住の用に供することが確実であると認められるときは、その敷地の用に供されていた宅地等は特例の対象に含まれます。

2.「特定居住用宅地等」の特例の改正概要

1)改正部分と趣旨

  • ①上記(表1)のうち「被相続人と同居していない親族」についての適用要件が次のとおり見直されます。 つまり、いわゆる“家なき子”に対する特例を活用したいき過ぎた節税スキームを規制しようとするものです。
  • ②改正については、平成30年度税制改正大綱に基づいております。

2)改正内容

相続開始前3年以内に自己、又は配偶者が所有する家屋に居住したことがない者に係る特定居住用宅地等の特例の対象者の範囲から次に掲げる者が除外されます。

  • ①相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係のある法人(同族会社や一般社団法人などをいいます)が所有する国内にある家屋に居住したことがある者
    <参考事例1>
    • イ)被相続人が居住用宅地を、家を持たない孫に遺贈して特例適用を図る下図のようなケースが除外対象になります。

      表2

    • ロ)本ケースにおける特例の適用関係
      • 改正前 ― 孫は“家なき子”に該当し、父から孫への居住用宅地の遺贈には特例が適用できます。
      • 改正後 ― 孫は3親等内の親族である子が所有する家屋に居住しているため特例の適用は受けられません。
  • ②居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者
    <参考事例2>
    • イ)自己の持ち家に居住していた相続人が相続開始の3年超前にその家屋を他の親族、又は第三者に譲渡し、その後はその家屋を賃借りして居住を継続、又は他の家屋を賃借りして特例の適用要件の充足を図る下図のようなケースが除外対象になります。

      表3

    • ロ)本ケースにおける特例の適用関係
      • 改正前 ― 子は相続開始前3年以内には自己所有家屋に居住していない(借家住い)ため、父から相続した居住用宅地について
        特例の適用ができます。
      • 改正後 ― 子は退去した居住用家屋を所有したことがあるため特例の適用は受けられません。

3)改正の適用時期と経過措置

  • ①適用時期
    上記2)の適用要件の改正は、平成30年4月1日以後に相続、又は遺贈により取得した財産に係る相続税について適用されます。
  • ②経過措置(その1)
    平成30年3月31日時点で改正前の“家なき子”の要件を充たす宅地等(経過措置対象宅地等)については、改正前要件を充足しておれば平成32年3月31日までの相続等においては本特例を適用できます。
    <コメント>
    • 1)この経過措置は、例えば遠方の伯父の家に下宿して通学ないしは通勤している者など、必ずしも租税回避を目的としたものでないケースへの配慮から一定の猶予期間を設けたものです。また改正特例を充足するための転居や親との同居などの対応期間などを考慮したものでもあります。
    • 2)なお過去に自己の持ち家を転勤などのやむを得ない事情により手放さざるを得なかった者についても、経過措置期間中の相続等については改正前の要件が適用されますが、平成32年4月1日以後の相続等には現状では救済規定が認められておりません。
  • ③経過措置(その2)
    平成32年3月31日時点で「経過措置対象宅地等」の上で被相続人の自宅が建替え中で、その工事が完了する前に相続の開始があった場合においては、相続税の申告期限までにその敷地を取得した親族がその建物に居住しておれば、いわゆる“同居親族”の要件を充たすものとして本特例の適用が受けられます。
  • <コメント>
    この経過措置は、例えば1人暮らしの親が子供家族と同居するために親の自宅を二世帯住宅に建替え中にその親が死亡したようなケースを想定して設けられたものです。